2013年09月25日

穀物を食べるということ vol.18「フィトケミカルに着目するアンチエイジングダイエット」としての側面

 「phytochemical/フィトケミカル」は植物が持っている機能成分のこと。植物自身が紫外線や害虫から自分を守るために作り出すフィトケミカルが、人間の体内でも抗酸化作用を発揮して活性酸素を取り除き、アンチエイジングに役立つと期待されています。植物はその色に対応した機能成分を持っていることが多く、トマトのリコピン(赤)、ブルーベリーのアントシアニン(紫)などが有名です。
 フィトケミカルをバランスよく摂るために、七色の野菜や果物(赤・橙・黄・緑・紫・黒・白)を意識的に摂る食事法が提唱されています。フィトケミカルの中には熱によって失活するものもあるので、前回触れたロー・フードは酵素とともにフィトケミカルを重視する食事法ともいえます。

 ここで「食べられてしまう植物の立場」からフィトケミカルを考えてみましょう。前述の通り植物にとってフィトケミカルは、自分の命を守るためのものですから、鮮やかな色の中には虫や獣(捕食者)に対する阻害要因を含む、つまり食べると毒になるものもあります。“食べるな危険!”というわけです。人類は長い歴史の中で、ある植物を食べて元気になったり、またある植物を食べておなかをこわしたり、ある時は命を失ったりしながら、適切な食べ方を工夫して子孫に伝えてきたに違いありません。
 和食には「できるだけ色鮮やかに仕上げる」という美学があります。青菜をさっと茹でて冷水にとる、ざるにのせて湯をかけ回す、あつあつの料理を器に盛ってから薬味を天盛りする、温度や時間を細やかに気遣いつつ蒸す・焼く・揚げる、塩や酒や酢を加えて食材の成分を守りながら煮炊きするなど、その知恵は枚挙に暇がありません。「きれいに設える」ためのこうした繊細な工夫が、結果としてフィトケミカルの長所も最大限に残してくれます。
 一方で日本の伝統食には、加熱によってフィトケミカルを解毒する教え=灰汁(あく)取りがあります。ワラビの灰汁を木灰と熱湯で中和する灰汁抜き、大豆を茹でるとき大量に浮いてくる灰汁(水溶性のサポニン)をすくって捨てる、などがそうです。
 加熱ではありませんが、未精白の穀物を12時間以上浸水して食べる発芽モードも、伝統食の知恵です。発芽モードの穀物の中で活性された酵素が、種子が自己防衛のためにもっている毒(植物ホルモンのアブシジン酸・発芽抑制作用)を消してくれるのです。参考:Vol.5 じっくり吸水させた粒を、やわらかに炊く

 間違えてはいけないのは「もともとヒトは動物だったのだから…」という理屈で、現代人の食を考えてしまうことです。「加熱食なのは人間だけ、だから病気をする…野生動物を見てごらん、生食だから病気はないでしょ?栄養価の高いままのロー・フードで病気知らず!」最近良く聞く論法です。しかし、この理屈、本当に正しいのでしょうか?
 「野生のコアラはユーカリ、リスは木の実、アイアイはラミーの実、アリクイはアリ、牛は本来なら草…」このように野生動物の餌は非常に限定的です。彼らは、毒にやられない生理機能が自分の身体に備わっているものだけを食べているのではないでしょうか?つまり、積年の自然淘汰で解毒酵素や消化酵素を身につけたものだけを食べているのです。
 コアラやリスと違って、餌(食べもの)を限定しない超雑食性の人間にとって、あれもこれも生食では危険です。人間が超雑食性でいられるのは、火を使って加熱調理をするようになり、野生の植物を食べやすく改良する作物化(動物も飼い慣らして家畜化)といった、「毒を軽減する方法」を手に入れたからともいえます。  
 フィトケミカルの究極の利用の形は「漢方薬」です。草木類を乾かしてすりつぶし、煎じて利用する…。濃縮されたフィトケミカルを私たちは薬として使ってきました。でも、一歩間違えて量が過ぎると毒になるから大変でした。私たちは、その扱いに長けた人を「医者(漢方医)」と呼んで尊敬し、その知恵を大切に守り受け継いできたのです。
 先人に習い、たくさんの食べものを楽しみながら、その命の恩恵にあずかって食したいものです。
posted by グレイニスト at 10:50| COLUMN Grainism 穀物を食べるということ