2017年01月19日

Vol.3 小麦の原種

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前号Vol.2では、作物化について、植物体への人為的な品種改良がどんな意図で、どのように行われていったのかを一般論として述べ、小麦の品種改良については、わかりやすく述べているサイトと三冊の本をご紹介するにとどめました。
今回は、グレインズ・イニシアティブとして、品種改良についての考え、そして、そもそもの「麦」の栽培の始まり、「麦」の原種についての見解をまとめておきます。
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品種改良は「緑の革命」により遺伝子組み換え操作へ、
「人類、策に溺れたり?」


自然のままに育っている植物を、ヒトの都合の良いように育てやすく、食べやすくする「作物化」。
農耕が始まった当初の作物化は、「どんなときにも家族や仲間が飢えずに食べるものがある」という恩恵を与えてくれるものでした。

しかし、ごく近年(ここたった50年ほどの間ですが)、この作物化、つまり、品種改良が過度に、しかも化学的に行われるようになったとき、“恵み”であるはずの作物は、突然、“不自然な食べもの”として牙をむき、人類の健康に大きなマイナスの影を落とし始めました。
特に、遺伝子組み換え技術は異種生物の間でも行われ始め、致命的なトラブルを作り出したのです。 
まさしく、「人類よ、策に溺れたり」というところです。

どのような遺伝子が選ばれて、次世代に受け継がれていくのか、それは本来、時の試練を経なければなりません。
しかし、遺伝子組み換え技術は、人類のここ数年で知り得た狭量な知識の中で「正しいはずだ」と推測したに過ぎないもので構成されています。

参考:http://gmo.luna-organic.org/?page_id=18
サルでもわかる遺伝子組み換えより  遺伝子組み換え基礎知識 

農学者ノーマン・ボーローグ(ノーベル賞受賞)による緑の革命(1940年代~1960年代)は、急激に増加する人口に対応するため多収穫の小麦=半矮性種の小麦(奇跡の麦)を誕生させ、これ以降、私たちが普段口にする小麦粉製品はほとんどが、この半矮性種、品種改良という名のもとに遺伝子操作された小麦となりました。
遺伝子組み換えという言葉が一般消費者に根付く前から、すでに小麦は遺伝子操作されてしまっていたのです。

参考:奇跡の麦
コムギや他の穀物では、多収になると穂の重さにより倒れ易くなる。ボーローグは小麦農林10号を親に用いて背の低い丈夫な麦を作った。
これが奇跡の麦である。
これにより、数億人もの食料危機に瀕している人々が救われたといわれている。
この後、米やその他の穀物の「奇跡の品種」がすぐ後に続き、世界の「緑の革命」の引き金となった。

ところが、奇跡の麦には元々の古代小麦にはなかった(もしくは少なかった)グリアジン(グルテンの前駆体)というたんぱく質が多量に含まれていたのです。
また、緑の革命とは、高収量品種の導入だけではなく、化学肥料の大量投入などにより穀物の生産を向上させ、人件費を低減し、穀物の大量増産の達成を目指す「農業革命」の一つにほかならないのですが、多投された化学肥料や農薬で農地は微生物の住めない不毛の地となっていきました。 

新しい品種の小麦は、地球環境を汚し、人に健康被害を及ぼす存在に成り果てていったことをしっかり理解しなければなりません。


麦(ムギ、バク)という表現

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麦(ムギ)とは、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクなどの、外見の類似したイネ科穀物の総称で、このように多くの種類を総称した日本語の「ムギ」に相当する表現は、英語にはありません。

英語では、それぞれの種類によってbarley(大麦)、wheat(小麦)などと、全く違う語源を持つ単語として使い分けられます。
また、私たち日本人は、麦をイネと全く別の穀物と思いがちですが、「科」は同じなのですね。植物学上の分類は下記の通りです。一度じっくりとみて、理解を深めておきましょう。
(ウィキペディアより)

イネ科 ○イチゴツナギ亜科
・Bromeae 連
・スズメノチャヒキ属 - イヌムギ - 雑草
・Poeae 連
・カラスムギ属 - エンバク、カラスムギ
・ドクムギ属 - ドクムギ/ノゲナシドクムギ(Lolium temulentum)、ホソムギ(ペレニアルライグラス)、
 ネズミムギ(イタリアンライグラス)、アマドクムギ(Lolium remotum)、ボウムギ(Lolium rigidum)
 他 - 牧草、雑草
・Triticeae 連
・エギロプス属 - タルホコムギ、クサビコムギ 他
・オオムギ属 - オオムギ(二条オオムギ、四条オオムギ、六条オオムギ (en)、ハダカムギ)
・コムギ属 - パンコムギ、デュラムコムギ、スペルトコムギ、
 エンマコムギ/クラブコムギ (Triticum compactum) 他
・ライムギ属 - ライムギ
○キビ亜科
・Andropogoneae 連
・ジュズダマ属 - ハトムギ

備考:スぺルト小麦は英語名、ドイツ語名はディンケル、エンマコムギはドイツ名、イタリア名ではファッロ
麦の起源

〜〜〜野生型の種から栽培型へ〜〜〜

麦は、世界の中で一番多く栽培される穀物で、起源も最も古く、二万年程前にアフリカ大陸のエジプトで野生種が利用され始めたといわれています。(詳細後述)

野生型の植物は、穂が熟すると、穂軸が折れて、種子が地面に飛び散ります。
これは、子孫を繁栄させるためには非常に都合の良い性質です。
ところが、人間が「食べものとして種子を収穫する」場合、種子が地面に飛び散るような穂では収量が減ってしまいます。

そこで、人間は、野生型のなかに混じっている、自分たちに都合がよい「穂軸が折れにくい少数のもの」を好んで選び出しました。
その結果、穂軸が折れにくい種子ほど人間に食べられてしまうリスクが高まったわけですが、同時に、収穫されるチャンスが大きいので、収穫物のうちに折れにくい性質の種子の割合が増加していきます。
収穫した種子を人間が播いて、また収穫を繰り返す、すなわち、栽培が始まると、穂軸の折れにくいものがだんだん増加して、何代かたつと折れないものばかりになっていくわけです。

播種、収穫という人間の作業が行われる栽培条件では、野生状態では有利であった穂軸が折れやすいという性質はもはや必要なく、逆に不利になってしまいます。
コムギもこの例外ではなく、野生コムギの穂軸は折れやすいのに、栽培型の穂軸は折れません。一般に、穂軸が折れないことは、穀物の野生型から栽培型を区別する特徴となっています。

同様のことが、種子の発芽についてもみられます。野生の植物は多数の種子を作り、ばらまきます。
しかし、種子は一斉に発芽することなく、2年も3年もの間、時間をかけてぼつぼつ発芽します。
種子が生きているのに発芽しない性質を休眠性といいます。
一般に、生長する植物体は環境変化への抵抗力が弱く、非常に厳しい環境の下では枯れてしまうものですが、休眠中の種子は災害に耐える力が強いので、簡単に死滅しません。
不時の災害で植物体が全滅しても、予備軍(休眠中の種子)が土中に残っていて、環境が良くなったとき発芽し、生長して子孫を残すことができるわけです。

しかし、人に管理される栽培植物にとっては、予備軍はもはや必要ではないばかりか、一斉に発芽することが望ましいので、休眠性のない、あるいは休眠期間の短い個体が選択されていきます。
種子が一斉に発芽することも栽培型の特徴であり、麦も例外ではありません。
こうして、小麦という「種」の絶対多数は、野生型から、人為的に進化?させられながら栽培型へと変わっていきました。

〜〜〜麦の利用の始まりと麦の自生地〜〜〜〜

イスラエルのガリラヤ湖畔にあるオハローU遺跡の中の、今からおよそ2万1,000年前のものである住居跡(木の枝を組み、草を葺いたものであったと考えられている)から、多数の魚骨とともに、野菜のオオムギ、二粒系コムギ、ピスタチオ、オリーブその他イネ科を含む無数の小粒の種子などを発見されており、同時に発見された擦り石には、これらの種子の付着澱粉が検出されていました。
つまり、この時代、すでにこの場で、麦の栽培が開始され、食べものとして利用されていたと考えるべき根拠が示されているわけです。最終氷期の最寒冷期、現代の平均気温から4~6℃低かった2万年前の新石器時代にすでに、麦が利用されていたという事実は、いかに、人類と麦という植物の関係が深いかを物語っているとはおもいませんか? 
麦は体に悪い、いや、穀物自体が人の生理機能には不適合だ、そもそも植物食(炭水化物)をエネルギー源にすること自体が不適合な動物が人間だなどと、述べてはいけないでしょう。 
過去からの情報を正しく知り、それらから、ほんものの知識を得るということは、今生きている私たち人類の未来をより明るくするためには、非常に重要なことです。
(麦の自然史:丹野研一著 第4章より、山本まとめ)

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さて、野生の麦の原種の自生地ですが、半乾燥地域である西アジア、「肥沃な三角地帯」と呼ばれる地域という通説通りでほぼ間違いないでしょう。
「肥沃な三角地帯」とは、地中海東岸レヴァント地方(シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル)から北メソポタミア地方(東南トルコ、イラク、イラン)にかけての地方(上図)、現代では、民族間闘争、宗教対立の渦中であるこの地域こそ、三大食糧源の一つである「麦」が産声を上げたところなのです。


〜〜〜野生型から栽培型へ〜〜〜

しかし、最初の麦の栽培は、あくまでも野生型の利用であり、それも、コムギの原種、オオムギの原種、ライムギの原種などが区別されずにまかれていたようです。
この混栽が、多様な品種への進化を促進したのかもしれません。

下図を見ると、「野生型」より「栽培型」が定着、確立していったのは、約7,000年前であるという通説通りであるといってもよいでしょう。
「野生型」「栽培型」、コムギ、オオムギ、合い交じり合いながら、麦は自生地より、1万,8000~1万6,000年前にかけて拡散、次第にユーラシア大陸に移動していきました。

参考:野生 オオムギ
http://www.nias.affrc.go.jp/press/2015/20150729/


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〜〜〜栽培型の進化(コムギ属の進化)〜〜〜


ゲノム分析の結果、コムギ属では、異なるゲノムをもつ種が交雑して雑種が生じ、その雑種の染色体数が自然倍加することで、新しい種が誕生してきたことが分かっています。

まず、野生ヒトツブコムギとクサビコムギの間で雑種ができました。 
染色体数は倍加して、これが野生フタツブコムギです。
(野生フタツブコムギは、Aゲノムを野生ヒトツブコムギから、Bゲノムをクサビコムギから受け継いでいる)

野生フタツブコムギは、チグリス・ユーフラテス川の流域のいわゆる「肥沃な三日月」地帯で約1万年前に始まったムギ農耕で、野生ヒトツブコムギと混栽されるようになり、栽培型のヒトツブコムギとフタツブコムギが誕生します。
これらの初期の栽培コムギは、硬い殻でつつまれて、容易に脱穀できない型でしたが、いつの間にか、殻の柔らかい、マカロニコムギのようなものが突然変異で生じました。
パンコムギなどの普通系コムギは、栽培型のフタツブコムギとDゲノムをもつ野生二倍性種タルホコムギとの交雑によってできました。
栽培型のフタツブコムギにタルホコムギの花粉がかかって雑種ができ、その染色体数が倍加して生じたのです。
このため、普通系コムギには野生型がなく、最初にできた普通系コムギは固い殻に包まれたスペルトコムギでした。
その後、突然変異が起こって、殻の柔らかい現在のパンコムギになりました。

下記引用は、神戸大学 植物遺伝学研究室のHPより
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http://www.plantgenetics-kobeu.info/album/%e3%83%95%e3%82%a9%e3%83%88%e3%82%ae%e3%83%a3%e3%83%a9%e3%83%aa%e3%83%bc%3a-%e7%a0%94%e7%a9%b6/fig1-jpg/



posted by グレイニスト at 18:24| グルテンフリーの真実